日 時 |
2002年2月2日(土曜日) 午後1時30分~ |
内 容 |
「災害危険度判定手法について」(山田剛司)
「人と防災未来センターの構想について」(室崎益輝) |
場 所 |
神戸大学工学部 教室: LR104 |
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災害危険度判定手法について 山田剛司
特に地区レベルの延焼危険度の評価手法について
国土交通省が推進する「防災都市づくり」の中での話
都市レベルの危険度と地区レベルの危険度の把握
災害危険度判定の範囲(出火と倒壊ははずされている。)
大規模地震の発生 (→ 出火) → 延焼
(→ 倒壊) → 焼死
国土交通省のマニュアル
防災拠点の整備
避難地・避難路の整備
都市防火区画の整備
密集法による防災まちづくり
実際に判定を行う自治体は
ソフトな出火源対策
耐震診断、耐震改修
地区レベルの延焼危険度
不燃領域率70%以上の区域→延焼危険度がゼロ
未満 → 木防建蔽率で評価
定義
不燃領域率の定義 不燃領域率=
空地面積の定義
オープンスペース系 辺40m以上かつ1500㎡以上の都市施設などの面積
道路系 幅員6m以上の道路面積
不燃領域率における耐火造の定義
鉄骨造は、防火木造と同等という取り扱いが安全側の推定といえる。
不燃領域率の算定データ
東京都の市街地状況調査報告書(昭和48年)
千代田区、墨田区、中野区のデータ
防火造の定義
東京下町地区の大震火災時避難に関する研究(昭和41年)
防火造:外壁モルタル塗の木造
鉄骨造(不燃建築・外壁モルタル塗の類)
鉄骨造の性能の評価が防火造と同じになっている点に問題を感じている。
耐火率の扱いの事例
大阪府A市 耐火建物=RC+SRC+レンガ造
大阪府B市 耐火建物=非木造
耐火造を可燃建物とすると
阪神・淡路大震災の復興地域が、従前と同じ延焼危険度と評価される。
ニュータウンが、延焼危険度の高い地区に区分される。
不燃領域率は、都市計画調査では使いやすいが、現状を認識しきれないことがある。
不燃領域率の定義(簡便法)
不燃領域率=a-b×木造建物棟数比-木造建物棟数密度
(東京都区部での相関係数は、0.923)
これは、詳細法よりも、まちの状況をつかむことができない。
地区レベル不燃領域率の評価のためには、次ぎの点が必要。
防火造の定義の見直し
準耐火造の定義の追加
耐火造の定義の見直し
木防建蔽率によるランク
裸木造100%の市街地と、防火木造100%の市街地が同じ延焼危険度にランク分けされてしまうという問題点がある。
木防建蔽率
ランク1 20%未満
ランク2 ~30%未満
ランク3 ~40%未満
ランク4 40%以上
地区レベルの木防建蔽率の評価のために
建蔽率を木造・防火造混在率による平均隣棟間隔に置き換える(堀内式)
建蔽率を木造・防火造・耐火造の延焼速度比から求めた焼失面積に置き換える(浜田式)
地区レベルの延焼危険度
消防活動困難区域率
自治体により基準がまちまち
震災時に消防自動車が通行できる道路幅員
震災時に有効な消防水利ホースの届く範囲
地区レベルの避難危険度
道路閉塞確率
国土交通省住宅局マニュアルとの差
道路閉塞率(京都府K市のモデル地区事例)
都市局基準 住宅局基準
都心部 51~58% 28~33%
周辺密集地 71~91% 37~40%
(30%以上で孤立する交差点が発生しはじめる。)
都市局:どこでも危険と評価する。(室崎:大きな道路をつくりたい?)
住宅局:効率高く、耐震立替で道路閉塞率を下げる。(室崎:改修の補助の必要性を低くしたい?)
地区レベル避難危険度
一時避難困難区域率
一次(時)避難地の定義があいまい
規模の要件
指定されていないオープンスペース
単純に人口密度で評価うするのか?
都市レベル延焼危険度
都市防火区画整備率
延焼遮断帯の軸となる道路等の必要幅=15m
候補路線が抽出できない
沿道の必要な不燃化率=70%
不燃領域率と混同している事例が多い
都市防災不燃化促進事業の目標
都市レベル延焼危険度
広域避難困難区域率
指定広域避難場所のかたより
広域避難場所指定基準のばらつき
小規模でも安全な区域の存在
広域避難不要地域の選定基準がない
おわりに
関西(地域)の実状にあった評価手法を考えること
対策(都市計画的対策だけにこだわらず)に結びつく評価手法を考えること
この調査は、全国的に40くらいされているが、結構高い額がついている。こまかいところに苦労して、あたまを使っているところに資金がこない。
(議論)
室崎:建物の性能の評価。もう一つのはなしで、空地のはなし。1000㎡もあれば隣家に延焼しない。小規模空地があまり評価されていないのではないか。不燃領域率で、まちの様相が左右されてしまう。個人のところをどうするかが重要。皮のうすいあんこがおいしい。個人がまもるべきルールをつくれば安全なまちになるのではないか。
吉田:鉄骨造の扱いで、耐火建築物と準耐火建築物では違うと思うが、その違いの評価法に取り入れられているか。
山田:モデル地区では、できるが、データがそろっていないところでは無理。それについては、両方の性能をにらんで評価に取り入れる。
室崎:土壁の真壁構造。もえにくいが裸木造とされてしまう。
生田:過去の火災事例から、うまく評価基準を設定できないか。
室崎:東京での数値、阪神での数値はわかるが、・・・。そのようなものからいかに一般化できるかが課題。日本の社会は東京中心。
越山:災害危険度判定の評価方法といっているが、自治体が政策判断のツールとして、対策のエリアを選定するために使うようなもの。これに対して安全にするために、積み上げ型のデータの危険判定がある。そのあたりが、かみあっていないのではないか。今後、このツールをどのようにいかしていくとよいのでしょうか。
山田:いくらツールといっても、あきらかに、危険度が低いところで、危険度が高いとされてしまうと、困る。政策と科学を整合させる前に、正確に評価する必要がある。
越山:ツールの到達点をあたまにいれて使う必要がある。
室崎:専門家とコンサルの役割というが、自分で考えないで鵜呑みにする体質を変えないといけない。 |
人と防災未来センターの構想について 室崎益輝
(震災メモリアルセンター)
人:人を中心に考えていかないといけない
未来:未来に向けてメッセージを出していく
と理解している。
ガラス張りが第1期、今年4月完成(昭和設計)、60億円。
二期は、来年4月完成(山下設計、別のところに立つ予定だった。ヒューマンケア(保健健康)センターだった。)、これも60億円。
運営費、年間5億円。
ガラス張り エネルギーを大量に使う
置かれるモニュメントについて 「5:46」 即物的
安全な地域社会を作る貢献が求められている。震災の経験と教訓の継承。
博物館でもなく、研修施設でもなく、FEMAでもない。成長し続ける啓発支援施設。
主な機能
●展示部門(何を、どのように伝えるか。議論があるところ)
4階 1.17シアター 1人の女の子の物語(フィクション、映像で)。お姉さんが火事でなくなって、お婆さんが富島に住んでいたとの設定。
3階、科学的に整理した資料
2階、自分で選んだテーマを調べるスペース
悲しさを伝えないといけない。しかし、「助け合った」「みんなで復興した」と美化する傾向がある。
●広域支援(FEMAのような、前の知事の思い、ただし、国から否定されている。)
大規模震災発生時に専門家を世界の災害が発生した場所に派遣し助言・支援を行う。
●人材育成(全国の防災担当の職員(知事から一般職員まで)の養成)
研修のカリキュラムづくりが現在行われている。
●調査研究(将来の防災対策を考える)
10部門 各部門に非常勤の上級研究員と専任研究員各1名
以上の諸機能が、有機的に連携すればうまく機能するのではないか。
基本的にはいろんな研究機関と連携する。(地震防災フロンティア研究センター、アジア防災センター、国連地域開発センター防災計画兵庫事務所、国連人道問題調整事務所アジアユニット(オーチャ)、(財)兵庫県ヒューマンケア研究機構、ひょうご健康福祉コミュニティカレッジ)
研究機関のスペースが広い。
収納庫のスペースが狭い。
学芸員がいない。
センター構想の課題
●連携ネットワーク
やや研究調査部門が前に出すぎている。
●参画と協働
市民の発想がどこにはいっているんだろう。市民の顔が見えない。福岡のアジア美術館が参考になる。
●持続的発展
最初はうまく立ち上がっても。展示はどんどんかえていかないと。市民の参加で本当の展示にする必要がある。このようなことが本当にできるのか。また、お客さんも先々まで来てくれるのか。みなさんで、もりたてていきたいと考えています。その意味で、みなさんから厳しいご批判をいただきたい。 |
<今後の予定>
3月2日は、オープンゼミ50回記念と室崎研25周年をかねて、
1)立木茂雄(同志社大学教授) 生活復興の実態と評価について
2)蘇 幼波(中国唐山工程学院教授)唐山大震災の復興について
とします。3月は懇親会(同窓会)を開催しますので、皆さんこぞって参加下さい。 |
連絡先:神戸大学室崎・北後研究室
TEL 078-803-6009 または 078-803-6440
MURオープンゼミナールは、広く社会に研究室の活動を公開することを企図して、毎月1回、原則として第1土曜日に開催しているものです。研究室のメンバーが出席するとともに、卒業生、自治体の都市・建築・消防関係の職員、コンサルタントのスタッフ、都市や建築の安全に関心のある市民等が参加されています。興味と時間のある方は遠慮なくご参加下さい。 |