○災害調査と事故調査に関連して最近感じたことを話します。
○事故調査と災害調査のちがいなど
事故調査 明石の場合
(人間が悪い。という先入観がある。交通関係、コンビナートなど。「人災」系)
災害調査 地震災害など、主として自然災害
(純粋の自然災害はない。最初の引き金が自然現象)
天災か人災といういいかたはまちがい
新宿の歌舞伎町雑居ビルの場合は?
対策検討委員会報告は出たが、事故調査ではない。
○どのような目的で、事故調査、災害調査が行われるか。
責任追及を主眼とする場合
原因追求を主眼とする場合
犯人探しがすき。しかし、犯人を明確にすることは、対策につながらない。
原因は単純なものではない。全体像をみて、原因を追求すべき。
一防災学者、一市長の責任としても、よくならない。
責任追及は、⇒補償をだれがするか確定する
⇒厳罰で抑止力とする
原因究明は、⇒事故を引き起こした環境、おおもとを絶つ。
どちらも、再発防止が目的であるが、どちらが再発防止に有効か。
原因が取り除かれて、初めて再発防止ができる。
○そこで問題なのは、現場についての状況がわからないことがあること
→ なにも対策がとれない
例えば、 陽気寮の火災の時、「当初、警察の了解がないと中がみれない。」「1週間たって、きれいになってからようやく中が見れた。」「警察の資料は一切みれない。公表されない」
責任追及と原因追求が矛盾する。
明石の場合でも、警察が通報をどのように受けたかなど、明らかにされない。
不利になる情報は出されない。
目的がちがうと、やり方が違ってくる。
例えば、震災後の被害調査(罹災証明、応急危険度判定、倒壊原因究明)
○再発予防のためには
原因究明のためには、疑わしきは、問いただす。
裁判については、疑わしきは、罰せず。
消防の火災原因調査は、再発予防が主眼なのだが、証拠能力を持つので責任追及を引きずっている。
不明としてしまうと、対策につながらない。阪神大震災の時の出火原因など。
ガス漏洩による、出火と同時に大きな火災となったと考えられる例など。
原因究明の立場の報告。裁判の証拠として使われてはならない。
真実にせまる必要がある。真実を語ってもらう必要がある。免責。
原因究明の結果 ⇒ 提言として使われるべき
○科学的な真の原因究明のために
現場の保存(証拠、被災の事実)
聞き語り調査 一種の被災事実の保存
火災の拡がり方 真実に迫る責務 後世に伝えて 再発防止につなげる
証言者の善意を活かす環境をつくる
本当のことをいってくれる必要がある ⇒ 罰せられないという保障がいる。
免責制度。組織が道義的責任を問われるが。
科学的専門性
原因究明する能力、体制を高める必要がある。
独立性をもった調査権が必要
あらゆる権力から独立。
世界には、独立した第三者の調査機関がある。
日本にも、航空機事故についてだけある。
(本当に独立しているか。不十分だが)
○素因、起因、誘因(災害の原因の構造)
素因 もともとの体質 (着火物)
起因 引き金 (火源)
誘因 きっかけ (経過)
一般には、起因だけ着目され、素因、誘因が見落とされがち。
構造的に原因をとらえる必要がある。
行政のチェック機構など、大切にする必要がある。
○自然要因、技術要因、社会要因(災害の原因の構造)
技術のあり方が問われている。
法律違反の問題だけでは防ぎ得ない。(新宿歌舞伎町ビル火災)
○被害者感情
無視すべき。科学的に原因に迫るべき。
○配布資料
日本学術会議人間と工学研究連絡委員会安全工学専門委員会、交通事故調査のあり方に関する提言 -安全工学の視点から-、平成12年3月27日.
室崎益輝、被災現場における調査活動の課題と教訓、2002年1月25日、日本建築学会でのシンポジウムで配布を予定している資料(このシンポジウムでは、災害調査のあり方について話し合われる。). |